【5/22/2013発売】 10万人のホームレスに住まいを!著〈対談〉ロザンヌ・ハガティ
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■目 次 はじめに――
常に社会企業が必要かというと、私はそうは思いません。ただし、問題が長期間にわたって解決されないという状況があるのであれば、そういう問題はもしかしたら公的なセクションでは解決できないかもしれないし、民間部門でも解決できないかもしれない。公でも民間でも解決できない問題、もしくは彼らが対応するにはふさわしくないような問題があるのではないかと思います。 長期にわたって解決されない問題の多くは、社会的な問題であると思います。そこに社会企業が必要とされる。なぜかというと、そういう問題の多くは、一方で市場経済的な考え方とともに、もう一方で人々へのインパクト、世の中のバランスというものも求められるのです。 市場という点では社会企業は、市場経済的な価値観もしくは考え方を一方で身につけています。事業自体の自立性もしくは経済的合理性にも関心を払います。 ただし他方で、そういう事業が人々にどういうインパクトを与えるかというところにも、価値観を置く。そのブレンドのバランスが求められる問題において、社会企業はその対応に当たるのにふさわしいのではないか。例えば、ホームレスの問題、老人の単身世帯の問題、こういう問題はすべてお金の問題だけで解決できるものではありません。そういう問題に対して公的な部門は、施設などハードの面と、経済面をうまくブレンドするのが余り得意ではありません。そういう問題に関しては社会企業の方が、その両方の問題に関心を払い、そのバランスをうまくとれるという点においてなし得るものがあるのではないかと思います。…… ――ロザンヌ・ハガティ(本文より) ●(あおやま・やすし) 1943年東京生。明治大学公共政策大学院教授。都市論、日本史人物論、自治体政策。中央大学法学部卒業。1967年都庁入庁。都市計画局課長、高齢福祉部長、計画部長、政策報道室理事などを歴任。99〜03年、石原慎太郎知事の下で東京都副知事。2004年より現職。 著書に『石原都政副知事ノート』(平凡社新書、2004年)、『自治体の政策創造』(2007年)『都市のガバナンス』(2012年、共に三省堂)ほか多数、郷仙太郎名義で『小説後藤新平――行革と都市政策の先駆者』(学陽書房人物文庫、1999年)。 ●ロザンヌ・ハガティ(Rosanne Haggerty) 〈コミュニティ・ソリューションズ〉(http://cmtysolutions.org/)代表兼CEO。 20年以上にわたり、ホームレスの解消およびコミュニティ強化のための革新的な手法を開発・実践してきたことで、世界的に評価されている。 ボランティア活動時代の経験から短期滞在型シェルターの根本的問題に気づき、1990年、NPO〈コモン・グラウンド・コミュニティ〉(http://www.commonground.org/)を設立。恒久的居住が可能なサポーティブ・ハウスを発展させるとともに、データに基づいたホームレス解消事業を推進する先駆的存在となる。その活動をさらに発展させるため、2011年に〈コミュニティ・ソリューションズ〉を新たに創設、ホームレスの発生や長期化という問題の解決に向けて、各地のコミュニティの支援事業を開始する。現在は、長期にわたるホームレス状態に陥った、最も支援を必要とする10万人にまずターゲットを絞った「100,000Homes」キャンペーンを展開中。 マッカーサー財団フェロー、アショカ・フェロー、ハント・オルタナティブ財団フェローのほか、〈センター・フォー・アーバン・コミュニティ・サービス〉〈シチズンズ・ハウジング・アンド・プランニング・カウンシル〉〈イラク・アフガニスタン退役軍人会〉評議員、アマースト大学終身評議員を務める。2012年には、その先進的なアイデアと行動力に対して、ジェイン・ジェイコブズ賞(ロックフェラー財団主催)を授与される。 |